部長ブログ
第2回;農薬と食 Pesticides and Foods その②「世界の胃袋を満たすために」「To Feed the World’s Population」

茶処で有名な静岡県牧之原市の総合病院には、お茶農家のこども達がたくさん来院されます。ある親御さんは、私のペットボトルのお茶を見て「私たちは一番茶しか飲まない」と言いました。ティ-パックやペットボトル飲料に使用される二番茶、三番茶はどうしても農薬使用量が多くなるから、だそうです。日本の緑茶は非常に高品質で味が良く愛飲者は世界中にいますが、残念ながら私たちが普段日本で飲んでいる茶葉の多くは輸出できません。ネオニコチノイド系農薬の残留濃度基準が諸外国では厳しく設定されているためです。
ネオニコチノイド系農薬が脊椎動物の神経細胞に対しニコチンと同様の影響を及ぼすことはすでに世界中で認められています。また、マウスを用いた実験では、ネオニコチノイド系農薬摂取により仔マウスにも何らかの行動異常が出現するという結果も少なからず報告されるようになりました。しかし、「発達障害」の原因をネオニコチノイド系農薬とするのは短絡すぎます。細胞レベルで見られる「事象」と個体レベルで見られる「症状」とは全く別の話であり、また、マウスで見られた事柄をそのままヒトに適用することには注意が必要で、特に脳の高次機能の話となるとほぼ無理に近いというのが、ラットの脳を7年間探求してきた私の正直な感想です。「発達障害」は脳のどこで何が起こっているのか、本当のところ何も分かっていない疾患であり、主障害である「社会性」や「コミュニケーション」や「集中力」についても、脳のどこがどう動いてその機能を遂行しているのか、正直1%も分かっていないのです。一つの遺伝子異常や一つの外的要因で説明できるほど、発達障害は単純ではありません。
2025年末には82億、2056年には100億人を突破すると言われている世界人口。その巨大な胃袋を賄う食糧確保策は最重要課題であり、絶対的生産量とサプライチェーン、分配ルールなどは安全保障に直結する問題です。ネオニコチノイド系農薬と発達障害との因果関係を科学的に実証しきれていない現報告からだけでは、EUのように「予防的措置」でネオニコチノイド系農薬を規制するという社会的決断に踏み切れない日本の事情も分かります。
しかし、注意は必要です。浸透性であるがゆえに洗っても落ちないネオニコチノイド系農薬は、あらゆる野菜やフルーツに残留しています。原因不明の倦怠感・頭痛・嘔気・めまい・心電図異常などが、常用していた緑茶と国産フルーツ摂取の中止で消失したという報告もあり、実際に私も臨床の現場で経験しました。たばこやアルコールが苦手な人がいるように、コロナワクチン接種後の副反応で苦しんだ人がいるように、ネオニコチノイド系農薬に感受性の高い人もおそらく一定数存在しているのだと考えます。では、どうしたら良いのか?次回は『食物等のリスクアセスメント』について。7月10頃にアップ予定です。
小児科部長からのあいさつ
2025年、EASEこども外来は新しくなります。これからのこども達が未知なるリスクと闘っていけるように。広い世界で変化の鼓動を感じながら健康的に過ごせるように。

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一般小児科・内科
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